自社採用とは?メリット・デメリットと具体的手法や流れ、成果を出すためのコツ

自社採用とは?メリット・デメリットと具体的手法や流れ、成果を出すためのコツ

企業が採用活動を行う方法には、さまざまなものがあります。

実際、各企業が採用の目的に応じて多様な手法を取り入れていますが、このところ積極的に取り組む企業が増えているのが「自社採用」です。

この記事では、自社採用とは何か?を詳しく解説したうえで、そのメリット・デメリットや具体的な手法を解説します。

自社採用を実際に進める際の流れや、成功させるためのコツも紹介するので、これから自社採用に取り組みたいと考えている担当者の方はぜひ参考にしてみてください。

目次

自社採用とは

いきなり「自社採用」と聞いても、具体的なイメージがわかない方もいるかもしれません。

ここではまず、自社採用の意味と、なぜ自社採用が注目されるようになったのかを解説していきます。

自社採用以外の主な採用手法についても紹介するので、自社採用の理解を深めるためにお役立てください。

自社採用とは何か

「自社採用」とは、企業が新たな人材を募集する際に、外部のエージェントや派遣会社、求人媒体などを介さず、自社で直接採用プロセスを進める方法を意味しています。

求人媒体などを利用して自社の情報を広く提供し、求職者からの応募を待つ従来型の採用手法とは異なり、自社採用では企業自らが積極的に候補者へアプローチしていくことから「攻めの採用手法」ともいわれます。

自社採用が注目される背景

昨今、自社採用が注目される背景には、いくつかの要因があります。

そのひとつは、自社にふさわしい優れた人材との出会いを増やし、採用成功の可能性を高めたいと考える企業が増えたことです。

現代の日本では、少子高齢化による労働者不足や、長引く不況下での採用人数抑制の反動などにより、働く先を探す求職者よりも、新たな人材を求める企業の数のほうが多い「売り手市場」の状態が続いています。

「売り手市場」になると、企業にとっては、求人広告を出して応募を待つだけでは求職者が集まらなかったり、優秀な人材が他の企業に先に獲られてしまったりするケースが増えてしまいます。

こうしたなか、企業自身が求める人材を直接的に見つけ出すために、積極的に採用市場にアプローチをかけていく自社採用に取り組む企業が増えました。

自社採用では、採用プロセス全体を企業がコントロールできるため、限られたコストの中で、より効率的で柔軟に採用活動を進めやすいといったメリットがあります。

加えて、自社の強み・特徴をダイレクトに求職者にアピールしやすいことから、「マッチングの精度を高めたい」と考える企業が、積極的に自社採用を実施するようになっています。

自社採用以外の代表的な採用手法・媒体

自社採用についておおまかに説明しましたが、そもそも自社採用以外には、どのような採用手法があるのでしょうか。

以下では、第三者を介する、自社採用以外の主な採用手法の種類・特徴を簡単に解説します。

求人媒体(求人サイト)

求人媒体とは、企業が求人情報を掲載し、求職者がそれを閲覧して応募するメディアです。

一般的には「求人サイト」や「ナビサイト」といわれるものが該当し、企業がそれらを利用する場合は広告枠を購入し、そこに自社の求人情報を掲載します。

求人媒体を活用すれば、企業は一度に広範囲に自社の情報をPRし、募集をかけることが可能です。

人材エージェント

人材エージェントは、働きたい人材と、働き手を求める企業をマッチングさせる役割を果たすサービスです。

企業がエージェントに対して自社の求人情報を提供すると、エージェントはサービスに登録している多くの人材の中から、適した候補者を見つけて紹介します。

費用(手数料)はやや高額ですが、優秀な人材を確実かつ速やかに採用したい場合などに、積極的に利用される採用手法のひとつです。

人材派遣

人材派遣とは、人材派遣会社と雇用関係のある人材を、働き手を求める企業に提供(派遣)するサービスです。

人材派遣を利用すると、企業が求めるスキル・経験などを持つ人材を人材派遣会社が選定して派遣してくれるため、「手間」という観点で見ると企業側の負担は少なめです。

ただし、人材派遣サービスは、基本的に一定期間のみの派遣となります。

そのため、長期的に人材を育成して自社の戦力になってもらいたいと考える場合は、正社員登用を検討するなどの必要性が出てきます。

ハローワーク

ハローワークは、正式名称を「公共職業安定所」といい、厚生労働省が全国に設置する公共の雇用サービスです。

求職者と企業を結ぶプラットフォームとして、働き手を求める企業の求人情報を集め、求職者に対してそれらの情報を公開します。

国が運営する仕組みであるため無料で利用できることや、地元志向の求職者が多く利用することから、地方での採用において活用しやすいことなどがメリットです。

自社採用の種類・手法

自社採用は、さまざまな方法で進めていくことが可能です。

ここでは、代表的な自社採用の手法を3つ紹介します。

採用サイトの活用

自社採用を行う方法として、まず挙げられるのが、自社の「採用サイト」を使う方法です。

採用サイトとは、企業のさまざまな採用情報を掲載するために、企業自身が保有するWebサイトです。

一般的な採用サイトには、会社紹介や仕事内容をはじめ、働く環境、先輩社員の声、待遇・福利厚生、選考の流れなど、求職者が必要とする情報をまとめて公開します。

採用サイトの構成は各社で異なりますが、通常は複数のページで設計され、テキストのほか、必要に応じて写真やイラスト、動画なども交えながら、自社の魅力や特徴を求職者にわかりやすく伝えます。

自社の採用情報を公式に発信するプラットフォームとして、また他社との差別化を図るために、オリジナリティのある採用サイトを制作する企業は増えています。

また、採用サイト上に応募(エントリー)ボタンを設置しておくことで、そこから応募の導線をつくることも可能です。

リファラル採用

「リファラル採用」とは、自社の社員のネットワークを通じて、自社にふさわしい人材を紹介してもらう採用手法です。

リファラル採用を導入すると、会社の文化や価値観、スキル、適性などがマッチした人材と出会いやすく、他の採用手法ではアプローチしにくい潜在層にまで出会えるチャンスが広がります

また、リファラル採用単体でみれば広告費がかからないため、採用コストを抑えつつ、自社に合う人材を採用できることが強みです。

加えて、既存社員が主体的に採用活動に携わることにより、会社に対する愛着心(エンゲージメント)が高まるといった効果も期待できます。

社員とのつながりを強めながら採用確度を高めるために、最近は大企業から中小企業まで、本手法を積極的に導入する企業も増えてきています。

ダイレクトリクルーティング

「ダイレクトリクルーティング」とは、企業が求める人物に直接アプローチをし、コミュニケーションをとりながら採用活動を進めていく採用手法です。

一般的な求人サイトや人材紹介サービスを利用するのではなく、企業自らが求人用の人材データベースなどを活用して自社にマッチする人材を見つけ出す「攻めの採用手法」として注目が集まっています。

ダイレクトリクルーティングでは、個々の候補者に合わせた「スカウトメール」を送ることが、候補者に対する最初のアプローチとなります。

他の採用手法と比較すると採用担当者の負担は大きくなりがちですが、自社の魅力を効果的に訴求しやすいなどのメリットがあり、うまくいけばマッチング度の高い人材を確実に採用することができます。

自社採用をするメリット

自社採用には、他の採用手法とは異なる利点や魅力がいくつかあります。

ここでは、3つのポイントを紹介します。

定常的に採用ができコストも節約できる

自社で採用を行う最大のメリットの一つは、採用コストの節約が可能なことです。

外部の人材紹介会社や求人広告サービスを利用する場合、1シーズンにつき安くても数万円、場合によっては数十万円以上の利用料がかかります。

また、外部のサービスは一般的に「利用可能な期間」が定められているため、決まった期間だけしか求人広告を出したり、そのサービスを活用した採用活動を行ったりすることができません。

しかし、自社採用であれば期間を決めず、コストを抑えながら定常的に採用することが可能です。これは、自社採用の大きなメリットです。

マッチング率の向上につながる

候補者とのマッチングが向上し、自社が本当に求める人物を採用できる確率が高まることも、自社採用を実施するメリットといえます。

自社の採用活動を第三者に任せることなく、自社主体で採用プロセスを進めていけば、企業の文化や価値観を、より正確に候補者に伝えやすくなるからです。

自社のビジョンやミッション、働く環境などに共感する人材を採用することは、将来的な内定辞退の防止や入社後の組織への適応などの面で見ても、よい効果が期待できます。

自社のブランディングが強化される

自社で採用活動を行うことには、企業のブランド力を向上させる効果があります。

現代の求職者は、企業の雰囲気や働く環境に興味を持った場合、各企業のWebサイト(採用サイトなど)やSNSなどを通じて積極的に情報収集をします。

こうした事情を理解したうえで、企業みずからが自社の情報をオープンかつ魅力的に伝えていけば、求職者にポジティブなイメージを与え、優秀な人材の引き寄せに役立ちます

採用ブランディングの向上は、短期的な採用の成功につながるだけではなく、中長期的な採用戦略においてもプラスの影響を与えるでしょう。

自社採用をするデメリット・注意点

自社採用ではさまざまな良い効果が期待できますが、注意すべき点がまったくないわけではありません。

以下で、自社採用をするデメリットといえる内容を紹介します。

担当者の手間や時間がかかる

自社採用を本格的に進めようとする場合、採用担当者は採用戦略の立案にはじまり、採用サイトの企画、応募者との面接・対応、選考プロセスの管理など、幅広い業務に携わることになります。

これらの業務には相応の手間や時間がかかるため、十分なリソースを確保しておくことが必要です。

担当者がきちんと採用活動に対応できるだけの手を空けておかないと、求職者とのコミュニケーション不足などが起こり、結果的に採用が成功しない場合があります。

自社や担当者にノウハウが必要

自社採用で成果を出していくためには、採用戦略や効果的な採用サイトの活用方法などに関する知識・ノウハウも必要です。

採用サイトの活用にしても、リファラル採用やダイレクトリクルーティングを行うにしても、きちんと大事なポイントを押さえて実行しなければ期待するほどの成果が出ない場合が多いからです。

また、自社採用をする場合、自社のさまざまな部門を巻き込みながら進めていかなくてはなりません。

求人媒体や人材紹介サービスを利用する場合のように、「第三者(代理店など)にすべてお任せ」といった形にはできない点にも注意が必要です。

継続的な運用と改善が必要

自社採用は一度だけの取り組みではなく、市場の変化や候補者のニーズなどに応じて、都度戦略の見直しやアプローチ方法を変えるなどの工夫をしながら、徐々に高い効果を出していくことを目指す採用手法です。

そのため、社内では定期的な求人情報の更新や採用プロセスの改善が求められます。

採用活動の成果を振り返り、よりよい施策を考えて実行していくことが、自社採用を成功させるための非常に重要なポイントとなるため、その点を見越した体制づくりや計画を立てておく必要があります。

すぐに効果が出ない場合がある

自社採用を行う場合、採用戦略の企画立案から実際の選考・採用に至るまでのプロセスに、やや時間がかかることがあります

というのも、先述した「採用サイト」を活用する場合にはサイト制作の時間が必要ですし、「リファラル採用」や「ダイレクトリクルーティング」も、ある程度の時間をかけて求職者とコミュニケーションをとりながら採用プロセスを進めていく手法だからです。

そのため、急ぎで人材を採用したい場面は、広告の出稿など他の採用手法の併用や、外部の専門家の力を借りることなども検討するとよいでしょう。

自社採用の始め方

このセクションでは、自社採用を始めたいと考えた場合に、どのような流れで進めればよいのかを解説します。

以下のステップに沿って実行することで、スムーズに、効果的な採用活動が行いやすくなります。

STEP
自社の採用目的を明確にする

最初に、なぜ自社で採用活動を行いたいのか、その目的を明確にしましょう。

たとえば、「若手人材を採用したい」「不足した人員を補充したい」などのほか、「企業文化の強化」や「特定のスキル・経験を持つプロフェッショナルな人材の確保」など、企業によって採用目的は異なります。

具体的な目的を見つけて言葉にすることで、採用方針が明確になり、目標達成に向けた活動がスムーズに進めやすくなります。

STEP
求める人物像を設定する

次に、採用したいポジションに求める人物像を具体的に設定します。

スキルや経験だけでなく、性格・価値観・志向なども考慮し、ペルソナ(仮想の理想的な求職者像)を明確にすることが望ましいです。

ペルソナ設定を行っておくことで、自社が本当に求める人材に、より強く惹きつけるコンテンツの制作や情報発信がしやすくなります。

採用プロセスをより効果的に進め、自社にマッチする人材と多く出会うためにも、このプロセスはぜひ力を入れて取り組んでおきましょう。

STEP
自社の強みを洗い出す

自社採用の効果を高めるためには、自社の強みを正確に理解し、きちんと言葉にしたうえで、採用に関わる社内の人間全体で共有することが不可欠です。

競合他社の特徴や強みとも比較しながら、自社ならではの魅力的な点を見つけ、それをアピールポイントとして強調できるようにするのが望ましいです。

働きやすい職場環境や独自の福利厚生、スキルアップに関する豊富な機会など、他社にはない強みを見つけ出していきましょう。

STEP
具体的な採用手法を決める(採用サイトの制作など)

自社採用の手法はさまざまです。

採用サイトの制作をはじめ、SNSを活用したアプローチ、リファラル採用など、各手法の特徴を把握したうえで、自社の採用目的に合った方法を選択しましょう。

複数の方法を組み合わせて自社の魅力を発信すると相乗効果が発揮され、より効果的に採用活動が進む場合が多いです。

ただし、選んだ手法によっては準備や制作などに一定の時間がかかるものもありますし、継続的な運用などで担当者の負担が大きくなってしまうこともあります。

社内のリソースや予算も考慮して、無理のない計画を立てることをおすすめします。

STEP
PDCAを回し続ける

採用活動は一度きりのイベントではなく、企業の採用目的に応じて、継続的に行っていく活動です。

そのため、実際に動き出してからは目標に対してどの程度の成果が出ているかを定期的に振り返り、改善を行いましょう。

このPDCAサイクルを回す中で、より自社に合う効果的な採用手法や戦略を見つけ、少しずつ採用プロセスを洗練させながら効果を高めることが理想的です。


自社採用を成功させるための3つのポイント

自社採用を成功させるためには、きちんと大事なポイントを押さえて採用活動を進める必要があります。

ここでは、とくに重要な3つのポイントについて解説します。

ポイント1:明確な目標を立てて長期的な視点で取り組む

採用活動は、短期的な目標を立てるだけでなく、長期的なビジョンをもって取り組むことが重要です。

長い目でみて確実に成果を出すために重要なのは、採用の目的や方針を明確にしてから取り組んでいくこと

自社にふさわしい人材の心に響く採用コンテンツを作り、効果的に情報を発信し続けるためにも、自社がどんな人材を求めているのかターゲットをはっきりとさせてペルソナ設定を行っておきましょう。

また、自社採用では、求人媒体や人材紹介などのサービスを利用する場合と比較し、成果が出るまでにやや時間がかかることがあります。

そのため、必要に応じて他の採用手法と組み合わせながら、中長期的な視点で採用計画を策定しましょう。

ポイント2:会社全体で目的や必要な情報を共有・連携する

自社採用は人事・採用担当者が主体となって行うことが一般的ですが、それ以外の部署も含めた会社全体の協力が不可欠です。

たとえば、採用サイトなどで「社員インタビュー」や「代表挨拶」のコンテンツを制作する場合など、経営者や現場の大きな協力が必要な場面も出てきます。

そのため、採用の目的や方針、求める人材像についての情報は、各部署や現場と積極的に共有して連携を図りましょう。

ポイント3:SNSを活用して認知拡大やブランディングを図る

自社採用を成功させるためには、就職・転職意欲の高い顕在層はもちろん潜在層も含めて、いかに求職者へ自社の魅力を上手にアピールし、信頼関係を築いていくが重要です。

その点において、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)は、採用活動での効果的な認知拡大やブランディングの手段となります。

現代の求職者の多くは、日頃からSNSを活用した情報収集やコミュニケーションを行っているため、企業はSNSを上手に活用することで高いPR効果が見込めます。

自社のSNSアカウントを作り、企業の価値観や働く魅力、イベント情報などを定期的に発信して求職者とのつながりを強化することで、自社にマッチする人材の引き寄せが期待できるでしょう。

採用サイトなど各種採用ツールの効果を最大化するためにも、SNSの活用もあわせて行うことをおすすめします。

まとめ

自社採用は、労働力不足で採用活動が厳しくなっている現代の日本において、企業自らが候補者を見つけ出す「攻めの採用手法」として活用されるようになっています。

「お金をかけて求人広告を出しても、なかなか理想とする人材が採用できない…」
「そもそも応募が少なく困っている…」

このような悩みをお持ちの企業は、自社採用によって課題解決を目指せる可能性があります。

ぜひ本記事で紹介したポイントを参考にしながら、少しずつ自社採用へ取り組むことも検討してみてください。

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