現代企業の採用活動において、欠かせないプラットフォームとして活用されている採用サイト。
自社の採用プロセスを円滑にする、求める人物像にマッチする人材の採用率が高まるなど、採用サイトではさまざまな効果が期待できます。
しかしながら、採用サイトを制作するにはそれなりの労力やコストがかかりますし、ただサイトを制作・公開しただけでは、なかなか思うような成果につながらない場合もあります。
そこで本記事では、採用サイトをつくるデメリット・制作時にありがちな失敗例をご紹介します。
効果的な採用サイトをつくるために気をつけたいポイントについても解説するので、採用サイト制作時にお役立てください。
採用サイトの目的・制作するメリットとは
近年、企業のさまざまな情報を世の中に広く発信するための「コーポレートサイト(会社ホームページ)」とは別に、独自の「採用サイト」を制作する企業が増えています。
ここではまず、採用活動で採用サイトが重要視されている理由と採用サイトの目的、制作するメリットについて説明します。
採用サイトの目的は?重要とされる理由は?
採用サイトは、企業の特徴や魅力、求人に関するあらゆる情報をまとめて、求職者にわかりやすく伝えるためのメディアです。
求人広告や口コミサイトなど、求職者が企業の情報を集めることができるツールやメディアは世間に多く存在します。
しかし、情報が溢れかえる現代社会において、企業の採用・求人に関連する情報が1箇所にまとまっている採用サイトは、求職者が情報を集めやすいメディアとして活用されやすいのです。
採用サイトは企業が公式に情報を発信するため信用度が高く、豊かな表現によって自社の特徴・魅力を存分に伝えやすいという特徴もあります。
現代の採用市場においては、求人広告をはじめ、人材紹介サービス、就職・転職イベント、各種SNSなど企業の採用チャネルが多様化していますが、それらすべての柱となるプラットフォームが採用サイトです。
実際、多くの求職者は企業情報を集めるために、コーポレートサイトだけではなく採用サイトを確認しているといわれます。
求職者に向けて自社情報を丁寧に伝え、採用活動を円滑に進めるために、採用サイトは必須のメディアになっているといえます。
採用サイトを制作するメリットとは?
一般的なコーポレートサイトには、事業内容や経営理念、会社概要など、企業関連する多様な情報を総合的に掲載します。
一方、採用サイトには「求人」に関連する情報のみを載せるため、求職者にとっては、企業選びにおいて求める情報を簡単に集めやすいことがメリットです。
また、採用サイトは求人広告と比較しても枠や表現に制約がない分、自社の価値観や特徴を打ち出しやすく、コンテンツを充実させることができます。
採用サイト上で自社の価値観や文化、働く環境、仕事の魅力などを丁寧に発信することで、求職者はその会社で働くイメージを膨らませることができます。
その結果、企業としてはより志望度の高い人材と出会い、採用できる可能性が高まります。
充実した採用サイトを公開することによって採用プロセスがスムーズになり、ひいてはマッチング率を高める効果も期待できます。
採用サイトの活用によって採用活動がスムーズに進み、ミスマッチのない採用活動ができるようになれば、中長期的には採用コスト削減を目指すことも可能です。
また、採用サイトは、求人広告のように決められた掲載期間がありません。
通年で採用活動を行うためのプラットフォームとしての役割を持たせることができますし、制作したサイトそのものを自社の資産として長く残すことが可能です。
採用サイトをつくる3つのデメリット
採用サイトは、企業の採用戦略の一環として欠かせないものになっている一方、制作をする過程ではいくつかのデメリットもついて回ります。
この記事では、採用サイトをつくる場合のデメリットに焦点を当て、事前に知っておきたい情報を紹介します。
デメリット1.制作のための費用・時間・社内工数がかかる
採用サイトを制作するプロセスでは、費用や時間、そして社内の人的リソースを必要とします。
採用サイトの構築過程では、Webデザイン、コンテンツ制作、プログラミングなど多くのスキルと専門知識を組み合わせることになるため、それらを実施するための資金が必要です。
事前に具体的な予算を設定し、十分に計画して見積もっておかないと、思うような効果を出せる採用サイトにならなかったり、後からどんどん費用が膨れ上がってしまったりする可能性があります。
また、採用サイト制作ではプロジェクトチームの担当者が深く関わるのはもちろん、掲載するコンテンツ内容によっては、社内のさまざまな部署・メンバーの協力も必要になる場合があります。
デメリット2.サイト維持・運営のためにもリソースが必要
採用サイトを制作し、無事に公開となればプロジェクトはいったんゴールを迎えますが、その後は「運営」に力を入れていく必要があります。
サイトはそのまま放置すると、期待するだけの効果を出すことが難しいケースが多いです。
常に最新の求職者ニーズやサイトのアクセス状況などを分析・把握し、集めたデータにもとづいて改善することを心がけましょう。
また、サイト公開後は、サイトの不具合やトラブルがあった際の対応もしなくてはなりません。
それらを自社で対応する場合でも、外部委託する場合も、サイトの魅力を維持し適切なコンテンツを提供し続けることを見越して、運営面のリソースまで確保しておく必要があります。
デメリット3.採用サイト単体で即効果を出すことは難しい
採用サイトを制作・公開したからといって、すぐに求職者からの問い合わせや応募が増加するなどの急激な変化が見られるとは限りません。
採用活動を活発化させ、目指すゴールに近づいていくためには、他の採用手法や媒体とも組み合わせながら戦略的に採用サイトを運用していく必要があります。
「作って終わり」ではなく、リリース後は継続的なサイト分析や社員・内定者アンケートなどでサイトの課題・改善点を見出して、内容を充実させていきましょう。
成果が出るまでにはある程度の時間がかかることを踏まえた予算計画も重要になります。
採用サイト制作のよくある失敗
採用サイトは、求職者と企業のつながりを生むと同時に、求職者の企業理解・志望意欲を高める役割を担う重要なメディアです。
しかし、せっかく力を入れて採用サイトを制作しても、思うような効果が出せていない企業も存在します。
ここでは、採用サイト制作に関連する失敗事例について紹介します。
- 失敗例1:採用サイトへの導線・誘導手段が不足している
- 失敗例2:デザインやビジュアル面にばかりこだわってしまう
- 失敗例3:求職者が求める情報を見つけにくい
- 失敗例4:コンテンツが不十分・求職者に伝わる内容になっていない
- 失敗例5:サイトに古い情報が掲載されている・更新されていない
失敗例1:採用サイトへの導線・誘導手段が不足している
採用サイトでありがちな失敗のひとつは、採用サイトへの誘導手段が不足しているため、アクセスが思うように集まらないことです。
採用サイトを制作する際には、主に企業名でWeb検索をする求職者を引き寄せるためにSEO対策を施すことも重要ですが、SEOの効果はすぐには現れないことが多いです。
また、中小企業やBtoB企業などあまり会社名が知られていない場合、そもそも社名で検索されるとは限りません。
せっかく力をかけて作ったサイトがWeb上でポツンと浮いてしまわないよう、他の採用メディア・ツールからの適切な導線や誘導手段を検討していく必要があります。
失敗例2:デザインやビジュアル面にばかりこだわってしまう
美しいデザインは魅力的ですが、十分な情報量のある効果的な採用サイトを作るには、見た目だけでは足りません。
採用サイトは、求職者に企業の魅力や文化を伝える大事なツールです。
素晴らしいデザインや動きのあるアニメーションは求職者の目を引く助けになりますが、それだけでは伝えたい情報や働く魅力を完全に伝えきることは難しいです。
コンテンツの充実度と質にもしっかりとこだわらないと、「見た目はきれいだけれど、内容が薄く、情報が適切に伝わらないサイト」になってしまいがちです。
結果として、採用サイトの本来の目的、つまり求職者の興味を引きつけて重要な情報を提供する役割が損なわれ、採用効果が思うように高まらない場合があります。
失敗例3:求職者が求める情報を見つけにくい
採用サイトを複雑な構成にしてしまうと、求職者が求める情報をスムーズに集められず、サイトの価値が下がってしまいます。
具体的な問題点としては、まず求職者の関心を引くことが難しくなり、サイトへの訪問者の減少にもつながります。
また、せっかくアクセスした求職者の応募意欲が上がらず、質の高い候補者が採用サイトを離れてしまう可能性が高まります。
失敗例4:コンテンツが不十分・求職者に伝わる内容になっていない
採用サイトにおいて求職者が求めるコンテンツが不足していると、求職者は企業に対する興味を持ちにくくなり、応募をためらうことがあります。
また、情報が抽象的で企業の文化や価値観を伝えきれていない場合も、求職者の関心を引くことは難しいでしょう。
さらに、コンテンツの質が低いと企業のブランドイメージに悪影響を及ぼし、信頼性を損なうことがあるため、情報の充実と質の向上に気を配る必要があります。
失敗例5:サイトに古い情報が掲載されている・更新されていない
サイトを作ったはいいものの、公開後は他業務に追われるうちに、そのまま放置してしまうこともやってしまいがちな失敗例です。
採用サイトに古い求人情報やイベント情報が残っていると求職者は混乱し、企業に対する不信感を募らせてしまうかもしれません。
日付が入っている箇所はとくに注意し、常にフレッシュな情報を保ち続ける意識が重要です。
また、他の求人媒体(求人広告等)と情報の整合性が取れているかどうかも、注意したいポイントです。
採用サイト制作で気をつけるべき点・失敗しないためのポイント
前章で解説したように、採用サイトでは、やってしまいがちな落とし穴がいくつか存在します。
では、具体的にはどのような点に気をつければ、より効果的で成果が出やすい採用サイトになるのでしょうか。
このセクションでは、採用サイト制作で失敗しないために、事前に知っておきたいポイントをまとめました。
採用サイトと他の採用媒体・ツールを組み合わせる
採用活動は多面的なものであり、採用サイトだけが成功に必要な要素ではありません。
単一の採用手法やツールに頼らず、複数の方法を組み合わせることで、異なる求職者層にリーチしやすくなります。
採用サイトは、基本的には情報提供を主としたプラットフォームなので、これ以外にも、たとえば求人広告の出稿、就職・転職イベントへの出展など、他の手法と組み合わせて求職者へのアプローチの機会を増やしましょう。
採用サイトに誘導する仕組みをつくる
別の媒体から採用サイトへ誘導する仕組みを設けることも、採用サイトを効果的に運用するためのポイントです。
たとえば、コーポレートサイトをはじめ、自社SNSなど他の採用関連メディアやツールには採用サイトへのリンクを張り、自社サイトへ誘導できる仕組みをつくっておきましょう。
SEO対策を施して検索エンジンからの流入を狙うだけでは、なかなかターゲット像とする人のアクセスが集まらないことがあるため注意が必要です。
加えて、自社採用サイトと、日本No.1求人特化型検索エンジン「Indeed」を連携させるのもおすすめです。
Indeedには「採用情報に特化した検索エンジン」の機能があり、ユーザーはIndeedを使って検索すると、多くの企業の求人情報を一括で集められます。
企業側にとっては、採用サイトとIndeedの連携によって、より幅広い層の求職者との接点を増やすことができるメリットがあります。
一度連携をすれば、自社の採用サイトの情報を変更するたびに自動的にIndeed側にも反映される仕組みなので、更新の手間や負担がかからないのも魅力です。
見た目の華やかさ以上にコンテンツが重要だと考える
採用サイトは、いくら見た目が良くても、中身が薄っぺらいものになっていると期待するだけの効果が得られない可能性が高いです。
求職者は、企業の文化や価値観、仕事のやりがい、福利厚生や働く環境などに強く興味を持ち、それらについて詳しく知りたいと考えます。
そのため、採用サイトには魅力的なストーリーや社員の生の声、仕事の魅力を伝えるためのコンテンツが不可欠です。
デザインは情報を補完する役割と考えて、ビジュアルとコンテンツのバランスを考慮しつつ制作を進めていくことが重要です。
予算が限られている場合、デザインや外観に過度にこだわるのではなく、コンテンツの充実や他の採用媒体へ投資することが、採用活動の効果を高めるための賢明な選択と考えられます。
さらに、最近では多くの人がスマートフォンでWebサイトを閲覧するため、PCのアニメーションにこだわり過ぎるよりも、レスポンシブデザインやモバイルフレンドリーな要素に焦点を当てるべきといえます。
訪れた求職者が見やすく、わかりやすいサイト設計にする
採用サイトを効果的に構築するには、まず求職者のニーズに焦点を当て、必要な情報を整理することが大切です。
その上でページ構成を検討し、コンテンツを整えて、サイトに訪れた求職者が簡単にアクセスできるように配置しましょう。
たとえば、求人情報、応募手順、企業の文化や価値観、社内の雰囲気など、求職者が最も知りたい情報は、すぐにわかるように掲載することが望ましいです。
さらに、サイトの使い勝手を向上させるために、ナビゲーションメニューの整備や検索機能の最適化なども考慮したいところです。
求職者がサイトをスムーズに利用でき、必要な情報に迅速にアクセスできるようにすることがポイントです。
求職者の心をつかむコンテンツ戦略を立てる
求職者の心をつかむコンテンツ戦略を立てることには、いくつかの大きなメリットがあります。
まず、魅力的なコンテンツは求職者の興味を引き、企業に対する好意的な印象を与えます。
仕事情報や選考プロセスはもちろんですが、自社の文化や働く環境が深く伝わるよう、リアルな社員の声や経験を共有することで魅力的なストーリーを提供しましょう。
求職者の心に響くコンテンツがあると、求職者は企業の文化や価値観を理解し、自分の職場に対する希望やキャリア目標との適合性をチェックしやすくなります。
さらに、コンテンツ戦略は応募者の質を向上させることにも繋がります。
適切なコンテンツを提供することで、志望度の高い求職者が適切なポジションに応募し、採用プロセスがスムーズに進行します。
結果として、採用プロセスの効率性や成功率が向上し、採用コスト削減の効果も期待できます。
採用サイト制作においては、求職者の期待に応えるための戦略的なコンテンツを検討し、自社の魅力を的確に伝えることが重要です。
制作後の運用体制についても検討しておく
採用サイト制作後の運用体制を整えておくことは、採用サイトを活用した採用活動をスムーズに進めるうえで重要なポイントです。
せっかく制作したサイトを十分に活用できるよう、運用面でやるべきことも考慮して、制作プロジェクト全体の計画を立てていきましょう。
サイトの維持・運営に必要な要素としては、主に以下のことが挙げられます。
定期的なコンテンツ更新
採用サイトでは、魅力的な情報を提供し続ける必要があります。
たとえば、最新の求人情報、社内のニュース、社員インタビューなどについての定期的な更新が求められます。
古い情報が掲載されたままだと求職者の関心が薄れるばかりでなく、企業の信用面・ブランド面でも影響をおよぼすおそれがあるため、注意してください。
問い合わせへの迅速な対応
採用サイトに訪れた求職者からの問い合わせや応募には、迅速な対応が求められます。
常に適切な情報提供や応答を行う体制を整えておくことも重要です。
サイト分析・SEO戦略の最適化・使いやすさの向上
採用サイトへのアクセスを増やすための施策として、SEO(検索エンジン最適化)戦略の最適化が挙げられます。
また、訪問者がサイト内で求人情報や企業情報を簡単に見つけられるよう、ユーザーエクスペリエンス(サイトの使いやすさ)の向上にも取り組む必要があります。
より利便性の高い、内容が充実した効果的なサイトにするためには、Webサイトの分析・解析ツールを使って継続的にアクセス分析やデータ分析をし、改善することが重要です。
内定者・社員アンケートをとり、必要に応じてコンテンツを見直すのもよいでしょう。
まとめ
採用サイトには、求職者に対して自社の魅力を自由に伝え、求人情報をわかりやすく提供することができるなど、たくさんのメリットがあります。
しかしながら、制作のためには必ず費用や時間、そして社内工数がかかります。
十分な準備をしてプロジェクトを進めないと、せっかくの採用サイトがあまり効果の出ないものになってしまう恐れがあるため、気をつけましょう。
また、採用サイト制作にあたっては、サイトの見やすさやコンテンツ内容などのあらゆる点において、常に「求職者視点」で考えることが重要です。
いったん作ったら終わりではなく、継続的にサイトの分析や課題を見つけ出して改善することが、採用サイトを活用して成果を出すための重要なポイントです。