各社の採用競争が厳しくなっている現代の採用市場において、求職者に選ばれる企業になるためには、採用サイトなどで自社の魅力を正確に、わかりやすく発信していくことが重要です。
本記事では、企業が採用ターゲットに対して「効果的に自社の魅力を伝える方法」を紹介します。
制作する各種採用コンテンツで自社の魅力が十分に伝われば、求める人材の引き寄せや採用ブランディングなど、さまざまな良い効果が得られます。
本編では、魅力の見つけ方から伝え方のポイントまで解説していくので、採用活動にお役立てください。
自社の魅力とは
まず、自社の魅力とは、そもそもどのようなものを意味するのかを見ていきましょう。
採用活動を進める際に、必ず自社の魅力を明らかにすべき理由とあわせて説明します。
「自社の魅力」とは何か
「自社の魅力」とは、その企業が組織内や外部の人々にとって魅力的であり、好感を持たれる要素・特徴を指します。
一般的に、自社の魅力は、企業の社員をはじめ、顧客や取引先、求職者など、さまざまなステークホルダーによって異なる視点から評価されます。
企業の魅力の一例として、提供する製品・サービスの品質やブランド力、独自の技術、業界での立ち位置といったものが挙げられます。
このほか、職場環境や企業の文化・社風、福利厚生など、主に働く人にとって魅力的とされる要素も自社の魅力となり得ます。
採用活動で自社の魅力を明確にすべき理由
自社の魅力を明確にしておくことは、採用活動を成功させるうえで欠かせない要素の一つです。
また、採用活動において自社の魅力を考える際には、以下の点を念頭に置いておくことが大事です。
- 魅力は具体的であることが望ましい
- 魅力は他社と比較されるものである
採用サイトや求人票などのコンテンツで、どれだけ「自社には働きやすい環境があります」「風通しの良い職場で人間関係が良好です」などとアピールしても、そこに根拠や裏付けがない限り、求職者の心にはなかなか響きません。
自社の魅力を効果的に伝えるには、できるだけ具体的な話にまで落とし込み、求職者が簡単にイメージできるものにすることが重要です。
同時に、社内の人間が「良い」と思うことだけではなく、外部から見ても「魅力的だ」と感じてもらえる情報を、魅力として打ち出していくことが重要になります。
また、求職者はさまざまな企業の魅力を常に比較したうえで、その中から自分に合う会社・働きたいと思える会社を選んで応募します。
そのため、競合他社と魅力の「差別化」をすることも、企業が自社の魅力を発信するうえでは非常に大事なポイントになることを知っておいてください。
自社の魅力を構成する主な要素
ここでは、自社の魅力を構成する主な要素について紹介します。
本来、自社の魅力は多岐にわたる要素でつくられるものですが、ここでは求職者に伝わりやすい魅力の考え方として、大きく4つの軸を紹介します。
- 人や社風の魅力
- 事業内容や商品・サービスの魅力
- 業界での立ち位置や技術的な魅力
- 待遇や働く環境の魅力
人や社風の魅力
採用活動における企業の魅力として最も重要な要素の一つは、その組織を形成する人々や社風です。
企業のメンバーが積極的に協力し合っている様子や、働く人たちの雰囲気の良さなどは、求職者にとって魅力的だと感じるポイントになります。
さまざまなプロジェクトに対して、日々どのような協力関係で仕事を進めているのか、人間関係はどうなのかといった話題を、具体的なエピソードやストーリーと合わせて説明できるようにしましょう。
比較的規模の小さな企業であれば、経営層との距離感や、実際にどんなコミュニケーションの機会があるかといった点も企業の魅力になり得ます。
事業内容や商品・サービスの魅力
企業の事業内容や提供する商品・サービスが持つ独自性も、自社の魅力としてアピールできる要素です。
どれだけ素晴らしい商品やサービスを提供しているか、それにどんな価値があるのかを伝えることができれば、求職者は自分の力を存分に発揮できる場所で、誇りをもって働くイメージがわきやすくなります。
この要素で具体的な魅力を考えている際には、たとえば製品やサービスの特徴、ブランドの歴史や信頼、顧客への提供価値、市場での地位などがキーワードとなります。
業界での立ち位置や技術的な魅力
企業が属する業界での立ち位置や、競合他社と比較した場合の技術的な優位性も重要なポイントです。
具体的には、企業がどんな分野でどれだけの影響力を持っているか、事業に最新の技術・アイデアをどれだけ取り入れているかといった点です。
とくに技術職や、豊富な経験が求められるポジションの採用活動を行う場合、求職者は自分のスキルや専門知識を生かせるかや、その企業で新たなことを学びステップアップできるかどうかを注視する傾向があります。
そのため、業界における自社の存在感や、新しい技術やアプローチを積極的に取り入れているといった点などを、積極的に伝えるようにするとよいでしょう。
待遇や働く環境の魅力
さらに、給与や福利厚生、働く環境についても、自社の魅力としてアピールできる要素です。
労働条件を明確に示すことは大前提として、柔軟な働き方ができることや、成長できるチャンスが豊富なこと、キャリアパスに透明性があることなどは、求職者が魅力を感じるポイントとなります。
働く条件が整っていると、仕事に対するモチベーションも高まりやすいですし、定着率も向上する傾向にあります。
なお、働く環境をアピールするためには、ただ仕組み・制度を示すだけではなく、社員がそれらを実際にどう活用して、どのような成果や満足感を得ているかといった点まで伝えられるように準備しておくのが望ましいです。
自社の魅力を見つける方法
自社の魅力を見つけたいと思っても、どのように行えばいいのか迷う方もいるでしょう。
以下では、魅力を見つけやすくなる方法を3つ紹介するので、各方法を組み合わせながら進めてみてください。
社員や経営層にヒアリングをする
自社の魅力を見つける方法のひとつは、社員や経営層にヒアリングをすることです。
社員であれば、入社10~15年以上のベテラン社員と、ある程度経験を積んだ中堅社員、そして入社2~3年程度の若手社員など、キャリア段階に応じた多くの社員の声を集めておきましょう。
さまざまな立場・役職の社員が、自社のどのようなところに魅力を感じているかを把握することで、自社の特徴や強みが見えてくるでしょう。
また、経営層にヒアリングをすれば、企業の理念やビジョン、成長性など、社員とは異なる観点からの声が集まりやすくなります。
競合他社と比較分析する
競合他社の魅力を洗い出して、自社の特徴と比較しながら、自社ならではの魅力を明らかにしていく方法もよいでしょう。
先述した通り、求職者はさまざまな企業の魅力を常に比較して、その中からより自分にマッチすると考える企業に応募し、入社先を決定します。
そのため、日頃からライバル企業の強みを意識して、よそにはない独自の魅力を見つけ出すことができれば、求職者に対して効果的なアピールがしやすくなります。
自社の「採用ペルソナ」を意識した魅力を洗い出す
採用活動を効果的に進めるために、「採用ペルソナ」をハッキリさせておくことも重要です。
採用ペルソナとは、自社で採用したい具体的な人物像を示すもので、年齢・性別・学歴・キャリア・ライフスタイルなど、さまざまな要素を入れ込んで設計します。
自社の魅力を洗い出していくと、どうしても情報がとっ散らかってしまいがちで、結局何を伝えればいいのかわからなくなることがあります。
しかし、採用ペルソナを意識することにより、具体的な人物像に対して、きちんと伝わりやすい魅力を考えやすくなります。
社内ヒアリングや競合分析などを通じて洗い出した自社の魅力が、本当に自社が求めている人材に響くかどうかを判断するうえでも、採用ペルソナを意識することは重要です。
自社の魅力の伝え方・伝える際に気をつけたいポイント
自社の魅力が見つかったら、その内容を求職者に対して適切に伝える必要があります。
このセクションでは、採用サイトなどの各種コンテンツで、自社の魅力を効果的に伝えるポイントを説明します。
求職者視点で伝え方を考える
自社の魅力を伝えるうえで最も大事なポイントといっても過言ではないのが、「求職者視点」に立つことです。
企業が自社の魅力を伝える際にありがちなのが、どうしても企業側の主観に偏ってしまい、求職者のニーズに沿っていない情報を提供してしまうこと。
もちろん、その企業の特徴や強みを最も知っているのは社内の人間であるため、社内の意見をもとに魅力を明らかにするのは問題ありません。
しかし、採用活動において、求職者は「お客さま」のようなものです。
お客さまである求職者が「知りたい!」と考えている情報や、求職者の不安を解消できるような情報を積極的に伝えていかないと、最終的に自社を選んでもらうことはできません。
また、たとえ同じ情報でも、伝え方ひとつで伝わり方は変わります。
求職者がその言葉を見たり聞いたりしたことで、心の中から「この会社で働いてみたい!」という思いがわき起こるかどうか?を意識しながら、魅力を伝えていきましょう。
具体的なストーリーや求職者のメリットを含める
自社の魅力は抽象的なものではなく、可能な限り具体的にすることも重要です。
他社との差別化を図るためにも、魅力としてアピールしたい内容には、具体的なストーリーや数字・データを入れ込みましょう。
×抽象的なアピール
「当社は社員が働きやすい環境を提供しています」
〇具体的なアピール
当社では、柔軟な労働時間制度を設けており、社員は週に2~3日(※プロジェクトによって異なります)リモートワークが可能です。また、オフィスにはリラックスできる休憩室や個室のワーキングスペースも整備し、個々が最適な働き方ができる環境を整えています。
「フラットな組織」「若手が活躍できる環境」といった抽象的な言葉は頻繁に使ってしまいがちですが、求職者には伝わりづらいのが事実です。
プロジェクトの実績や、具体的な取り組みを伝えることで企業に対する印象づけが強化されるため、ここでも求職者視点に立ち、求職者にとってのメリットを伝えるように心がけてください。
本音や真実が伝わるように発信する
求職者は、採用サイトなどのコンテンツを通じて、建前や飾りごとではない企業の「本音」を知りたいと考えています。
とくに、現代の求職者はインターネットやSNSなどに慣れ親しんでおり、膨大な情報を集めることや、情報の質を判断することにも長けている人が多いです。
「自社を良く見せたい」と思う気持ちはどの企業にも共通する思いですが、発信する情報にごまかしがないかや、情報に真実味があるかどうかには十分に注意してください。
飾り過ぎて真実味がない情報を提供していると、求職者は逆に「本当だろうか…」と不信感を抱き、ネガティブなイメージを持ってしまうこともあるため気をつけたいところです。
場合によっては、企業が抱えている課題や、あまり得意ではない領域、改善している部分などを自社の魅力とあわせて伝えることで、求職者に対して企業の本心が伝わりやすくなります。
また、採用サイトには「社員インタビュー」や「社員座談会」といったコンテンツを積極的に入れ込んで、社員のリアルな声・体験談を積極的に届けることも効果的です。
個別性が低い/高い情報を選考段階・シーンに応じて提供する
採用活動では、自社の魅力を伝えるにあたって情報提供の仕方が重要です。
これを「個別性が低い/高い情報」で考えると、採用サイトと選考プロセスの面接では、適切なアプローチが変わります。
採用サイトでは、広く多くの求職者に、企業の魅力をわかりやすく伝える必要があります。そのためには、以下のポイントに気をつけましょう。
- ビジョンや価値観をわかりやすく:
企業の目指す方向性や大切にしている価値観をシンプルに示すことで、求職者に共感を呼び起こします - 社風や働き方をリアルに:
仕事の雰囲気や働き方の特徴を伝え、実際の職場環境をイメージしやすくします - 社員の声や体験談を積極的に発信:
現場の想いや仕事の体験談を通じて、企業の魅力をより具体的に、臨場感をもって伝えます
一方、面接の場では、個々の求職者に焦点を当てて、求職者の強みや特性、経験などを把握したうえで、その人に伝わりやすい形で自社の魅力を伝えることが大事です。
より踏み込んだ情報提供をすることで、個々の求職者が、自社の雰囲気や文化にフィットするかといった点も判断しやすくなります。
自社の魅力を効果的に伝えている採用サイトの事例
ここでは、自社の魅力を採用サイトを通じて効果的に伝えている事例を紹介します。
企業によって表現方法はさまざまですが、自社の魅力をどのようにまとめて、どのような形で発信すればよいかを考えるにあたっての参考にしてみてください。
株式会社博報堂アイ・スタジオ
株式会社博報堂アイ・スタジオは、大手広告代理店・博報堂グループのなかでも、「デジタル」を中心とした制作物の企画・制作を手掛けている会社です。
数多くのクリエイティブを手掛けている同社では、自社の採用サイトでも、独自性のある豊かなコンテンツを発信しています。
なかでも「Culture」ページでは、一風変わった自社の福利厚生や、個性豊かな社員の特徴、充実した社内設備・働く環境などの魅力を、パッと目を引く独特のイラストレーションとコピーで表現。
制度をただ列挙するだけではなく、どうしたら求職者に楽しく読んでもらい、関心を高めてもらえるかまで考えられたコンテンツといえるでしょう。
不二製油株式会社
不二製油株式会社は、大阪府大阪市に本社を置き、食用油やチョコレート用油脂などの開発・製造・販売を行うメーカーです。
主に食材の原料を作る会社であることから、社名そのものは、求職者にはあまり知られていないかもしれません。
そんな同社の採用サイトでは、採用サイトの中で「もし、不二製油がなかったら」コンテンツを掲載。
このコンテンツに触れることで、私たちが毎日のように口にする多くの食べ物が、実は同社の事業に深く関連していることがわかります。
一見ネガティブ・弱みといえそうな要素も、同社のように、伝え方次第では自社の強みや魅力に転換できます。
その他でも、自社の歴史や事業の特徴を「3分で知る」コンテンツで紹介したり、「プロジェクトストーリー」や「職種別の社員インタビュー」、さらには「働く環境」や「オフィスツアー」など、求職者が求める情報がしっかりと掲載されているサイトです。
加賀電子株式会社
加賀電子株式会社は、1968年に設立し、エレクトロニクス総合商社として、電子部品・半導体の販売、電子機器の受託開発・製造サービスなどの事業をグローバルに展開する会社です。
同社の採用サイトは、トップページのファーストビューで、「変化に挑め。進化を起こせ。」というキャッチコピーと、ドアが開くアニメーションからスタート。
その後に出てくるコピーも、「業界No.1企業」を目指すという企業の思いが強烈かつ印象的に表現されており、訪れた求職者を惹きつけます。
サイトの各種コンテンツでは、そうした思いを裏付けるように、代表の未来に向けたメッセージや、小さな企業からリーディングカンパニーにまで成長した自社の歴史などが紹介されています。
「求める人物像」については、現場の営業職から海外勤務など多様な経験を積み上げてきた役員からのメッセージとして発信。
自社の挑戦心や大きく成長できる環境を存分にアピールしたうえで、共に「業界No.1」を目指す将来の仲間に対する希望や期待がふんだんに込められたサイトになっています。
クラスメソッド株式会社
クラスメソッド株式会社は、クラウド、デジタル化、データの3つの分野で、クライアントのビジネス成長を支援する会社です。
同社の採用サイトでは、「数字でわかる」コンテンツにて、インフォグラフィックを用いた自社の魅力を視覚的に表現。
残業時間や休日数、平均年収など求職者が気にするポイントに加え、自社の高度な技術力や取引社数の多さなどもアピールしています。
また、同社の採用サイトで特徴的な点は、「自社で働くメリット」や「他社内定と迷われている方へ」といったコンテンツを充実させていること。
求職者に向けて、自社で得られるものや、他の企業にはない独自の魅力・強みをストレートに発信しています。
「検討のためにじっくり考えたい」「改めて面談で話し合いたい」などの要望にも応える姿勢を示しており、ミスマッチのない採用を行いたいという企業の考えがよく伝わってきます。
日工株式会社
日工株式会社は、インフラ整備に不可欠なプラント機械メーカーとして、世界50カ国以上のプラント建設を支えている会社です。
同社の採用サイトでは、事業内容や職種紹介などの重要な情報と、企業の強み・魅力をわかりやすく、かつ多面的に伝えています。
「社会の中の日工」コンテンツでは、何をしている会社なのかが視覚的にイメージできるように、自社が手掛ける分野や製品について、イラストや写真をふんだんに用いて紹介。
「キーワードで見る」コンテンツでは、数字とテキストを組み合わせる形で、自社の魅力的なポイントが一目で印象に残るように表現しています。
このほか、「社員の声」として多様な職種・役割の社員が活躍するリアルな姿や、「フォトギャラリー」でオフィスや現場環境を積極的に公開したりしていることも特徴です。
株式会社ベルパーク
株式会社ベルパークは、独立系の携帯電話販売代理店として、キャリアショップ事業および法人ソリューション事業を展開する会社です。
同社の採用サイトは、事業の強み・成長性を伝えることに加え、「人」や「社風」の魅力を強く打ち出していることが印象的です。
「Culture & Growth」コンテンツにおいて、自社独自のカルチャーが生まれた背景と、社員たちがどのような価値観・行動を大切にしているのかを具体的に説明。
あわせて、充実した教育・研修制度など「人」への投資を惜しまない企業の取り組み姿勢を伝えることで、若手のうちから大きく成長できる環境であることが伝わりやすくなっています。
株式会社プレナス
株式会社プレナスは、「ほっともっと」などの飲食チェーン運営や、食材・包装等資材の販売等の事業を手掛けている会社です。
同社の採用サイトでは、「プレナスの魅力」ページを作成し、自社の特徴や魅力を伝えています。
多様な魅力を「待遇・福利厚生」「社員の成長をサポートする環境」「研修」「同僚」「社風」「社員同士のつながり」の7項目に分け、それぞれイラストも交えてわかりやすく説明。
さらに、各項目について、実際に社員がどう感じているか、どんな風に制度を活用しているかについて、社員の顔写真と合わせた「リアルな声」として載せています。
自社で働く魅力が、よりリアリティのあるものとして求職者に伝わりやすくなっています。
まとめ
企業が採用活動を成功させるために、自社の魅力を明らかにするプロセスは欠かせないものです。
本記事で紹介したように、自社の魅力を洗い出して伝える際には、主観と客観のバランスをきちんととっていくことが重要になります。
採用担当者をはじめ、社内の人間の意見や思い込みだけで魅力を語ってしまうと、求職者にはあまり響かず、いくら採用活動を行っても思うような成果が出ないことがあります。
常に「求職者視点」を意識しながら、競合他社と差別化できる独自の強みを見つけて、効果的に発信をしていきましょう。