採用サイトに掲載する多様なコンテンツのなかでも、とくに自社の魅力を訴求しやすいのが「プロジェクトストーリー」です。
この記事では、企業の実際の取り組み・挑戦について、物語調で語るプロジェクトストーリーを作成するメリットや、実際の作成手順・ポイントなどについて解説しています。
自社の独自性を打ち出し、他社との差別化を図るうえでも効果的なコンテンツなので、採用サイト制作時にはぜひ参考にしてみてください。
採用サイトの「プロジェクトストーリー」とは
採用サイトの「プロジェクトストーリー」とは、企業が過去に実施したプロジェクトや取り組みに焦点を当て、その成果や経験をストーリー形式で紹介するコンテンツです。
一般的に、プロジェクトストーリーには以下のような情報を含みます。
- プロジェクトの背景
- プロジェクトの社会的な意義
- 直面した課題や困難
- チームの役割と協力
- 達成した成果や学び
- 社員の声や体験談
プロジェクトストーリーは、企業の取り組みやプロジェクトを物語調で表現することにより、組織の強みや価値観、自社が社会にどのような価値を提供できるかなどを印象的に伝えるのに役立ちます。
プロジェクトストーリーをつくるメリット・必要な理由
採用サイトでプロジェクトストーリーをつくるメリットとして、主に以下2つのことが挙げられます。
- リアルな企業文化を伝達できる
- 独自性を打ち出し魅力的な企業イメージを構築できる
一般的な企業の採用サイトでは、事業紹介や募集職種、給与・福利厚生といった、さまざまな情報を提示します。
このような基本情報の公開はもちろん不可欠ですが、それだけでは自社のリアルな雰囲気や魅力を印象的に伝えることは難しく、他社との差別化につながらない場合があります。
そこで役に立つのが、企業の事業・取り組みをストーリー仕立てで語るプロジェクトストーリーです。
心理学の研究では「人はストーリーに感動する」ことがわかっており、セールスやプレゼンなどの場では、いかに相手の心を動かすストーリーをつくるかが成果を出す重要なポイントのひとつといわれます。
採用サイトでも、企業がプロジェクトに立ち向かう過程での出来事や苦労・成功などの物語を語ることにより、自社の雰囲気・魅力がより強く伝わりやすくなります。
オリジナリティあるストーリーは求職者の興味関心を高め、求職者自身が「その企業でどんな風に活躍できるか」といった想像を膨らませるのにも役立ちます。
企業側にとっても、自社の価値観に共感する人材を集めやすくなるといったメリットが得られます。
プロジェクトストーリーを魅力的につくるポイント
採用サイトにおけるプロジェクトストーリーの作成手順と、コンテンツを魅力的につくるためのポイントをあわせて説明します。
作成手順
まずは、本コンテンツで伝えたいメッセージや企業の強みに合致するプロジェクトを選びましょう。
多くの学び・課題を乗り越えて成功につながった意義のあるプロジェクトを選ぶと、より密度の濃い有益な情報を伝えやすいです。
選定したプロジェクトに関する詳細な情報を整理しましょう。
期間・目的・成果・関与したメンバーなどの基本的な情報を把握します。
必要に応じて、プロジェクトに関わったメンバーに直接ヒアリングをし、当時の体験や思いを語ってもらいましょう。
情報をもとに、プロジェクトの進行を時系列で整理し、ストーリーを構築していきます。
プロジェクトの開始から終了までの流れを追体験できるように工夫します。
大まかなストーリーができたら、写真や図などの視覚的な要素も積極的に盛り込んで、読み応えのあるコンテンツを作成します。
ひと通りストーリーが出来上がったら社内でフィードバックを受け、冗長な部分を削ったり、よりわかりやすい表現に調整したりしながら仕上げていきましょう。
ポイント
プロジェクトストーリーには、求職者がとくに知りたいと考える情報を入れ込みましょう。
たとえば「仕事の流れ」「働く環境」「社内の人間関係」などの要素を意識して盛り込むことで、求職者のニーズにマッチするストーリーになりやすいです。
プロジェクトストーリーをつくるときの注意点・よくある失敗
求職者にとってのわかりやすさを大事にする
プロジェクトストーリーは、自社の思いをふんだんに盛り込みやすいコンテンツですが、「求職者にきちんと伝わる内容になっているかどうか」を念頭に置いて作成してください。
たとえば、専門用語や業界特有の話題は、求職者にとってはなかなか理解できない場合があります。
せっかく熱を込めたストーリーをつくっても、その中身がわかりづらいものだと、それ以上読み進めてもらったり、興味を持ってもらったりするのは難しいです。
わかりやすさは大前提とし、そのうえで求職者をワクワクさせるストーリーをつくっていきましょう。
「喜怒哀楽」や「挑戦のプロセス」も大事に構成する
プロジェクトストーリーでは、単にプロジェクトの内容と成果を記載するだけではなく、それらの関わった「人の思い」や「挑戦の過程」がしっかりと浮かび上がるような構成にすることが重要です。
たとえば、物語をつくる中で、社員が感じた苦労や喜び、つらかったことなど、社員の喜怒哀楽も意識的に含めるとよいでしょう。
また、企業が日々挑戦する姿や、世の中に価値を提供しようという思い・姿勢を積極的に伝えることが、意欲的な求職者の惹きつけにつながります。
プロジェクトストーリーコンテンツの参考事例
ここからは、「プロジェクトストーリー」コンテンツを公開している採用サイトの中から、とくに参考になる事例を紹介します。
戸田建設株式会社
戸田建設株式会社は、1881年に創業し、官公庁や大学、商業ビルなど、大規模な建設プロジェクトを多数手がけてきた建設会社です。
同社の採用サイトの「プロジェクトストーリー」は、求職者を意識したわかりやすい表現、説明を重視したコンテンツになっています。
たとえば、本文に入る前には「Prologue」としてストーリーの概要を紹介。また、ストーリーに欠かせない重要な用語については「Key Word」として説明を付けています。
一般的に、プロジェクトストーリーは、どうしても専門的な話題が膨らんで、求職者にとっては理解し難いコンテンツになってしまいがちです。
求職者の理解を助け、興味を引く効果的なコンテンツを作成するために、ぜひ同社のページを参考にしてみてください。
株式会社澤村
株式会社澤村は、滋賀県高島市に本社を構え、オフィスや店舗、公共施設などの設計・建築・施工を手掛ける企業です。
同社の新卒採用サイトで特徴的な点は、過去のさまざまなプロジェクトについて、各プロジェクトに関わったメンバーが「対談・クロストーク」をする形でストーリーを表現していること。
一般的なプロジェクトストーリーは、三人称視点で客観的に物語を語る形が多いですが、同社の場合は社員の対話を中心に構成されているため、より自然で親しみやすいコンテンツに仕上がっています。
株式会社廣榮堂
株式会社廣榮堂は1856年に創業、岡山県岡山市に本社を構え、岡山名物「きびだんご」などの和菓子製造・販売を行っている会社です。
同社の採用サイトは、メニュー画面が縦書きで表示されるなど、独自性のあるデザインとなっています。
「プロジェクトストーリー」コンテンツでは、特色の異なる3つの「ものづくり」ストーリーを用意。
創業160年以上の歴史を持つ同社が長年受け継いできたこだわりのみならず、新たな時代に対応しながらチャレンジを続けていることを積極的に伝えています。
ストーリーは、プロジェクトに関わったメンバーへのインタビュー形式で作成しており、文中には写真も積極的に掲載。読みやすさ、伝わりやすさにも工夫したつくりになっています。
タカラスタンダード株式会社
タカラスタンダード株式会社は、水まわり専業メーカーとして、キッチンやお風呂など、高品質なホーローを使った製品づくり・販売を手掛けている会社です。
同社採用サイトの「職種紹介・プロジェクトストーリー」コンテンツの冒頭では、自社のさまざまな部門・職種が、それぞれどのような役割を持ち、連携して仕事をしているのかを図で説明。
加えて、「製品開発」「素材研究」「プロダクトデザイン」など、1つの製品づくりに関わった多様な職種の社員が、それぞれの目線でプロジェクトの経験を語っています。
プロジェクトを進める過程で味わった苦労や工夫したこと、そして完了後までの物語を極力シンプルにまとめるなど、「読み進めやすさ」が特徴的なコンテンツです。
読売新聞社
読売新聞社は、東京本社・大阪本社・西部本社の3本社を持ち、全国紙「読売新聞」を発行する大手新聞社です。
同社の採用サイトは、どことなく新聞記事をイメージさせる、各コンテンツをブロック(枠)で配置したデザインが印象的です。
プロジェクトストーリーは、「スクープが生み出された背景」として、3つの物語を公開。
高い取材力・編集力を生かした新聞社ならではの、読み物として非常に完成度の高いコンテンツになっています。
思わず読み進めたくなるタイトルや見出しの付け方、余白も大事にした見やすいページレイアウトの工夫など、多くの企業にとって参考にできる点が見つかるはずです。
東京海上日動グループ
東京海上日動グループは、東京海上ホールディングスを持株会社とし、世界46カ国の組・地域でグローバルに事業を展開する大手損害保険会社です。
同社の採用サイトでは、「仕事を知る」コンテンツ内で、6つのプロジェクトストーリーを掲載。
それぞれの物語は、同社が手掛ける事業のスケールの大きさや、社会における自社の存在感・価値などが伝わるものとなっており、求職者の損害保険会社に対する印象がより良いものに変わりそうです。
一目見るだけでどんな物語なのかがわかりやすく、思わずクリックして読み進めたくなる「タイトルの付け方」も参考になるでしょう。
まとめ
採用サイトの「プロジェクトストーリー」は、企業の実際の取り組み・挑戦について物語調で伝えることで、求職者に自社の強み・魅力を情感豊かに訴求しやすいコンテンツです。
他社と差別化できる要素をアピールし、求職者の関心を高めるうえでも効果的なコンテンツであるため、ぜひ作成を検討してみてください。
作成の際には、求職者がとくに知りたいと考える情報を多く取り入れながら、わかりやすく魅力的なストーリーを考えていきましょう。