求職者が就職・転職先の企業を選ぶ際に、とくに重点的に情報を確認する項目のひとつが「福利厚生」です。
福利厚生の内容を求職者に向けてわかりやすく丁寧に伝えることには、自社の採用ブランディングや魅力づけなど、企業側にとってもさまざまなメリットがあります。
この記事では、採用サイト上で福利厚生のコンテンツを公開すべき理由や、実際にコンテンツを作成する手順・ポイントなどを解説しています。
採用サイトの「福利厚生」コンテンツとは
採用サイトに掲載する「福利厚生」は、企業が従業員に提供する各種の手当やサポート体制に関する情報をまとめたコンテンツを指しています。
福利厚生には、「法令で定められているもの」と「法定外のもの」があります。
法定の福利厚生には、雇用保険・労災保険・厚生年金保険・健康保険などが含まれ、企業はこれらを従業員に提供する義務があります。
一方、法定外の福利厚生は、企業が独自に定めて導入する福利厚生制度です。
この内容は企業によってさまざまで、通勤や住宅支援に関するものから、退職金制度、子育てや介護支援、さらにはスキルアップや自己啓発につながるものなどまで、多岐にわたります。
採用サイトでは、とくに「法定外」の福利厚生について求職者にわかりやすく説明することで、自社の働く環境をアピールすることができます。
福利厚生コンテンツを公開するメリット・必要な理由
採用サイトで福利厚生コンテンツを公開すべき大きな理由は、以下の通りです。
- 自社の魅力をアピールできるため
- 企業イメージや競争優位性が向上するため
福利厚生が充実していることは、企業の魅力の一部です。
これを公開すれば、企業は求職者に対して働く環境や待遇の良さをアピールできますし、求職者は魅力的な企業かどうかを判断する材料のひとつとなります。
さらに、企業が社員の健康や働きがいに配慮する姿勢を公開することで、企業イメージの向上につながります。
実際のところ、企業によっては「福利厚生ばかりに注目して応募してほしくない」と考えるかもしれません。
しかしながら、不安定かつ先の見通しが難しいとされる現代社会において、求職者が「働きやすさ・安心感」を重視するのは当然ともいえるでしょう。
また、少子高齢化が到来し売り手市場が続く日本の採用市場では、求職者は多くの企業の中からより良い企業を選びとろうとします。
福利厚生の内容を正しく、魅力的に伝えていかなければ、「選ばれる企業」になることは難しいのが現実です。
質が高く、自社にマッチする人材との出会いを増やすためにも、求職者にとって魅力的な福利厚生コンテンツを作成することは不可欠といえます。
福利厚生コンテンツを魅力的につくるポイント
このセクションでは、採用サイト上に掲載する福利厚生コンテンツの作成手順を説明します。
魅力的につくるポイントと合わせて参考にしてみてください。
作成手順
福利厚生に関する具体的な情報を各部署や担当者から収集します。
手当・休暇・保険などの詳細な内容を洗い出します。この際、法定福利厚生の記載も忘れないように注意してください。
福利厚生は細かくなりがちなため、集めた情報をカテゴリーに分けていくとよいでしょう。
たとえば、「生活支援関連」「育児・介護支援」「自己啓発(スキルアップ支援)」などのカテゴリーごとに整理します。
各福利厚生項目について、できるだけシンプルでわかりやすい言葉で表現します。
業界用語や難解な表現は避けて、誰でもすぐに理解できるように工夫しましょう。
イラストやアイコン、写真などを使って視覚的に情報を補完すると、より情報が伝わりやすくなり、求職者に与える印象も強まります。
社員の声や感想を取り入れてリアルな体験を伝えるのもよいでしょう。
ポイント
福利厚生の内容は、ただ名称を羅列するだけではなく、できる限り具体的な数字や説明を盛り込みましょう。
例)
「仕事と育児の両立支援」
→実際の育休取得率を年度と合わせて公開したり、職場復帰後のサポート体制(例:社内託児所完備、テレワーク可)などまで伝えましょう。
「書籍購入費用補助」
→月にいくらまでが補助の対象となるか、実際にどれくらいの社員がどのような目的で活用しているかなどをあわせて紹介しましょう。
福利厚生コンテンツをつくるときの注意点
採用サイトで福利厚生コンテンツをつくるときに注意したいポイントを解説します。
最近の求職者ニーズを意識する
福利厚生といっても、その内容は多岐にわたり、求職者が実際に求めるものは時代とともに変化しています。
そのため、採用サイトで福利厚生コンテンツを作成する際には、最近の求職者が求める福利厚生は何かを把握し、それを伝えていくことが重要です。
たとえば、現代の求職者は、若い世代ほど「ワークライフバランス」を求める傾向が強いと言われます。
実際、さまざまな求職者へのアンケート調査を見てみると、福利厚生で最重要視するのは「休暇制度」という声が集まっています。
また、不安定な現代社会においては、「諸手当」や「各種補助」など、安心して日々を過ごせるかどうかといった要素を重視する求職者も増えていることがわかります。
参考:「マイナビ 2024年卒大学生活動実態調査 (4月)」
現代の求職者のニーズを踏まえると、ひと昔前の福利厚生の定番であった保養所の利用や、社員旅行や懇親会といった社内のレクリエーションばかりをアピールしても、求職者への魅力づけという点では、あまり効果的でないかもしれません。
直近のデータを収集し、現在の求職者が強く求める福利厚生を把握したうえで、求職者の心に響く内容を積極的にアピールしてください。
整備中であれば前向きな取り組みを伝える
実際には、中小企業では大手企業のような充実した福利厚生を導入することが難しかったり、人員等の不足で福利厚生にまでなかなか手が回らないといったケースもあるでしょう。
できることなら採用活動を実施する際に福利厚生を整えることが望ましいですが、すぐには難しい場合でも「伝え方・見せ方」を工夫することはできます。
最も大切なのは、現状の福利厚生の内容を具体的にわかりやすく伝えること。
また、整備中であれば、現在進行形で福利厚生をさらに充実させようとしている前向きな姿勢を伝えることも大事です。
情報を正しく公開することが、求職者の安心につながります。
福利厚生コンテンツの参考事例
ここからは、「福利厚生」コンテンツを公開している採用サイトの中から、とくに参考になる事例を紹介します。
株式会社GA technologies
株式会社GA technologiesは、IT×不動産をテーマにした、独自のサービスを提供している企業です。
新卒採用サイトにおける福利厚生コンテンツでは、自社のさまざまなサポート体制について「キャリア・スキルアップ」「健康」「働き方」などのテーマ別に分けて掲載。
各テーマの見出しをクリックすると該当箇所にすぐ飛べるようになっているなど、サイトを訪れた求職者の利便性が考慮されています。
各制度の特徴も端的に説明されており、求職者にとって見やすく、わかりやすく情報を届けるための、よい参考事例といえるでしょう。
株式会社アクトビ
株式会社アクトビは、デジタル領域のプロフェッショナルとして、企業のDX支援やソフトウェア企画・開発などを展開するい企業です。
同社の採用サイトでは、福利厚生についての詳しい紹介を「CULTURE」コンテンツ内に掲載。
特筆すべきは、制度の紹介だけではなく、それらを利用している「社員の声(感想)」もあわせて掲載していること。
これにより、社員が実際に制度をどう活用し、どれくらい満足しているのかが、具体的に伝わりやすくなっています。
さらに、自社がどのような思いで働く環境を整えているのか、メッセージを発信することで、企業の価値観・社風が伝わりやすいコンテンツになっています。
ポート株式会社
ポート株式会社は、就職・リフォーム・ファイナンス・エネルギーの4つの軸で社会課題に向き合い、ユーザーと事業者のマッチングDX事業を展開する企業です。
採用サイトの「福利厚生」コンテンツでは、「就労環境」「育児介護支援」「休暇・褒賞」などのジャンル別に分けて、独自の制度を掲載しています。
特徴的な点は、制度の説明に加えて「利用者の声」を載せていること。
これにより、社員が各制度を実際にどのように活用しているのかや、どんな働きやすさにつながっているのかについて、求職者が具体的に知ることができます。
あわせて働きやすい環境づくりに関する人事担当者のメッセージも掲載することで、企業の働く環境・魅力が伝わりやすいコンテンツになっています。
株式会社静岡銀行
株式会社静岡銀行は、1943年に設立した、しずおかフィナンシャルグループ傘下の地方銀行です。
採用サイトは「〜多彩〜」をコンセプトに、色どり豊かで親しみやすいデザインで作成されています。
「福利厚生」コンテンツでも、アイコンや図、グラフなどの視覚的表現を十分に取り入れて、見る人にとってわかりやすいように表現。
各制度の説明も非常に丁寧になされており、企業の誠実な姿勢や、働きやすい環境づくりに注力していることが伝わりやすいコンテンツになっているといえるでしょう。
税理士法人中央会計社
税理士法人中央会計社は、愛知県で30年以上にわたり、経営者や個人事業主の財務面を中心にサポートする税理士法人です。
同社の採用サイトの特筆すべき点は、単なる福利厚生の紹介だけではなく、「ワクワク福利厚生会議」という独自コンテンツを作成していることです。
「ワクワク働ける会社をつくること」を目指し、社員の提案による、新たな福利厚生制度を創出してきた同社。
本採用サイトでは、エントリーと同時に、求職者のアイデアを募る応募のしくみを構築しています。
自社の社風・働く環境を伝えるとともにユニークな応募のしくみを作りたいと考えている企業の参考になるでしょう。
株式会社オロ
株式会社オロは、「Technology × Creative」をスローガンに掲げ、企業のマーケティング活動を支援する会社です。
採用サイトの「福利厚生・制度」コンテンツでは、同社の柔軟な働き方や人事・社内制度などを丁寧に掲載。
とくにユニークな制度についてはイラスト・写真を活用し、求職者が内容を簡単にイメージできるように工夫しています。
説明がつい単調になってしまいがちな福利厚生コンテンツだからこそ、積極的に視覚的表現も取り入れて、できる限り具体的に伝えることが重要です。
わかりやすい福利厚生コンテンツの事例として、ぜひ参考にしてみてください。
株式会社カインズ
株式会社カインズは、関東地方を中心に、ホームセンター「CAINZ」を展開する大手小売企業です。
同社の新卒採用サイト「福利厚生」コンテンツでは、さまざまな制度を紹介するにあたり、ページ冒頭でまず企業のメッセージを伝えています。
何のために福利厚生を充実させ、社員にどうあってほしいのかを語ることにより、求職者に対する思いがしっかりと伝わりやすいコンテンツになっているといえるでしょう。
また、各制度の説明は「働き方とプライベートをサポート」「くらしの安心をサポート」のように、テーマ別に見出しを設置。見やすさの面での工夫もしっかりとなされています。
まとめ
採用サイトでは、自社の働く環境や働き方などについて、さまざまなコンテンツを通して伝えることが重要です。
なかでも「福利厚生」は多くの求職者が注目する要素であるため、とくにわかりやすく、魅力的なコンテンツを作成していきましょう。
福利厚生は自社の魅力を発信し、他社との差別化を図るうえでも役立ちます。
自社の福利厚生の内容を今一度よく把握したうえで、求職者のニーズを意識しながらコンテンツづくりを行ってください。